砥石って聞くと包丁を研ぐアレと思いますが、基本は同じです。しかし金属加工で使用する砥石は少し違います。包丁を研ぐ砥石は四角形ですが、金属加工で使用する砥石は丸が多いんです。丸といってもUFOみたいな形です。この石でできたUFOは超高速で回転することで硬い金属が加工できるんです。ちなみに加工する部分は外径側で宇宙人が乗り降りしない部分ですね。こんなレベルでもOK、誰でもOK、今日から知ればまったく問題ないです。
1.砥石の3要素
砥石は石と読めるように主成分は石です。陶器と同じで石を細かく砕いたものを焼き固めたものです。ですが、砥石にはよく呼ばれている3つの要素から出来上がっています。要素というくらいなので、この要素の配合によって得られる機能が変わってるのです。
3要素が以下の通りです。
【砥石の3要素】 砥粒 :石を細かく砕いたもの ボンド :石と石を接着する接着剤 空孔 :砥粒と砥粒の間にある空間
これこれ、よく聞いたことあるんですけど、よくわからないですよね。
遊園地とかゲームセンターとか行くとたまにボールプールってあるじゃないですか?あのキッズたちが狂ったように遊ぶヤツです。砥石をイメージする時、このボールプールがぴったりなんです。ある巨大な容器にボールを詰めるだけ詰め込んだことを想像してみてください。ボールはぎっしりと密着していますが、ボールとボールは点同士でしか密着してなく、ボールとボールの間には空間があります。
これが空孔です。
ボールは砥粒で、ボール同士を接合しているのがボンドになります。実際の砥石でのボールに当たる砥粒は石なのでそれなりに重量があるのですが、砥粒と砥粒のすきまには空間があるため、砥石自体は見た目よりも軽いんですよ。計算するとわかるんですが、砥石の体積のおよそ50%程度は空孔(空気)なんです。
【参考】1辺が1mmの立方体に直径1mmの球をいれた時の球以外の体積は? 1-(4πr^3)/3=0.476=47%
2.砥粒
砥粒は元となる石を細かく砕いたものです。この砕く前の石にもいろいろな種類があります。この石の種類によっては硬い石から柔らかい石まであり、それによって最終的な砥石の硬さが左右されます。いろいろなものがありますが、大きくは「A:アルミナ」「C:炭化けい素」の2種類に分類されます。
傾向としてはアルミナより炭化けい素が硬く、生材(比較的硬くない鉄鋼)はアルミナ、超硬材(硬い鉄鋼)は炭化けい素を使用する傾向にあります。また炭化けい素よりもさらに硬いものでCBN(人工ダイヤモンド)、セラミックなどがありますが、これももちろん硬い鉄鋼を加工するために使用します。
ちなみにA、C、WA、GC…など砥粒にはそれぞれ記号が決められていますが、これは砥粒の種類を表しているものです。
3.粒度
一度は使用したことのある紙やすりの裏側(ザラザラでない面)によく#60とか#200とか書いてあり、よく60番、200番とか呼ばれているこれが粒度になります。粒度はひと粒あたりの砥粒の大きさを表したもので数値が大きいほど砥粒は小さく、数値が小さいほど砥粒は大きくなります。これを理解するには同じ大きさの紙の上に同じ大きさの砥粒を敷き詰めた時の砥粒の数と理解するとわかりやすいです。
この状態をイメージすると、砥粒が大きいほど紙の上に乗せることができる数は少なくなって、砥粒が小さいほど数は多くなります。
粒度が小さい値ほど… 砥粒は大きいので、一回の加工量は多く、加工抵抗が小さく、加工面は粗くなる。 粒度が大きい値ほど… 砥粒は大きいので、一回の加工量は小さく、加工抵抗が大きく、加工面は滑らかになる。
4.組織
組織は砥粒率と呼ばれ、単位体積あたりの砥粒の量を示します。
「ん? 砥粒の説明の時のイメージと同じ?」そうです同じなんです。粒度は砥粒の大きさで、組織はそのサイズの砥粒がどのくらいを占めているかを表すんですね。
組織は上述(1mmの立方体に球を入れた時のすきまの体積)で分かる通り、50%くらいが一般的で、どんなに頑張っても60%程度が限界のようです。下表からもわかるように粗にする方は10%くらいまでの設定はあるようですね。
5.まとめ
・砥石の3要素は「砥粒」「空孔」「ボンド(接着剤)」
・砥粒の硬さによって、砥石の硬さが変わってくる
・砥石の約50%くらいは空孔(穴)その割合を組織と呼ぶ
・粒度は数値が大きくなるほど細かい(加工面が滑らか)、小さくなるほど粗い(加工面が粗い)。
「あれ?ボンドの説明は?」って思いますが、説明しようにもあまり内容が薄いんですよね。
ボンドは接着剤のことでその種類もいろいろあるんですが、基本は接着強度が高いほど砥石は硬くなるように、コメントできないほど普通なんで省きました。
砥石を購入する際はいろいろな記号の組み合わせで注文するのですが、業者にこの種類の鉄鋼をこれくらいの面粗さで加工したいと言えば、大体OKですが、そもそもその記号が何を表しているくらいはわからないと業者と話すことも難しいですね。専門的なことは砥石メーカーにお任せすればいいのですが、基本的なことは理解しましょう。
以上です。
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