自動車、ロボット…などの機械産業、建築、土木に至る産業までさまざまな分野で使用される鉄鋼材ですが、その種類や製法などはあまり広く知られていません。特定の業界にいると使用する鉄鋼は同じようなものばかりで、そういうものと言う形で軽視されがちです。どうやって作られ、どのような種類があるかを知ることで新しい発見があるかもしれないですね。
1. 鉄鋼材料の製法
鉄鋼は「鉄くずなどのスクラップから作られる電炉」と「鉄鉱石と石炭から作られる高炉」があります。ここでは広く採用されている電炉について説明したいと思います。まず集められたスクラップが電気炉に投入され溶解されます。電気炉と言う名のとおり、スクラップに通電させ溶解します。そのためこの炉はアーク炉とも呼ばれます。
次は精錬という工程になります。精錬は必要な品質になるように脱酸、脱炭、非金属介在物の除去、および添加物の付与を行います。この精錬は取鍋精錬(LF)と真空脱ガス(VD)の組合せにより、より精度の高い成分を生み出すことができるようです。そのため鉄鋼の成分品質はほぼこの工程で決まってきます。
最後は鋳造するために、連続鋳造装置を使用します。この連続鋳造は5~6階立のマンションくらいの高さから溶解した鉄鋼材を流すことで、徐々に冷え固まったものが地上に排出され、これがブルーム、ユージン、インゴットと呼ばれる鉄鋼材料の素になります。その後は使用用途に合わせて熱間圧延、冷間圧延、鍛造を繰り返し、熱処理(主に焼鈍)をされることで市場で流通する鉄鋼材料になります。
2. 鉄鋼材料の表記記号の規則
鉄鋼材料はいろいろな種類があり、それらを表す記号もさまざまです。すべてではないですが、おおよそは以下のような規則で定められています。
材質:ほとんどが鉄なのでS(STEEL)から始まります。
形状、製法、用途:板、棒、線…などの形状や、圧延、鋳物、鍛造…などの製法、構造用、工具用、特殊用などの用途を示している。
P(plate):板 | C(casting):鋳物 | S(stuctural):構造用 |
T(tube):管 | F(forging):鍛造 | K(kogu) :工具用 |
W(wire):線 | CP(cold plate):冷間圧延板 | U(use):特殊鋼 |
種類:引張強さ、耐力、炭素量などの目安となる値を示している。
例:
SS400 →引張強さが400
SUJ2 →炭素量が2(数値が大きくなるほど多くなる)
S45C →炭素量が0.45%
3.鉄鋼材料の検査成績書であるミルシートは
鋼材メーカーは製造した鋼材の検査をした証として鋼材検査証明書を発行します。この証明書類をミル(Mill)は工場、シート(Sheet)は書類を組み合わせミルシートと呼ばれています。
ミルシートは製造ロット毎に「成分」「機械的特性」などの検査結果が記載されています。ここでいう製造ロットとは鋼材メーカーにもよりますが、鋼番とも呼ばれ、上述した鋳造が完了するまでのロット単位であることが多いです。理由としてはその後の圧延、引抜、鍛造、熱処理などで主にミルシートで証明するような成分や機械的特定の内容に変化が生じないと考えられているからです。
ただし、硬度や寸法データは鋳造以降の圧延や熱処理で決まるため例外です。ミルシートの一例を以下に記しておきますが、メーカーにより書式はバラバラなので、あくまでも例として「このようなもの」と理解してください。
4.ミルシートに記載される納入状態の記号とは
よくミルシートに記載されている「納入状態」ですが、これはどのような状態で納入されるかを示していますが、よくわかりませんね。納入状態とは連続鋳造後にさまざまな圧延などの塑性加工が行われ、その後に熱処理を行います。これた熱処理がどのような状態で完了したかをしめしたものです。切削、研削などの機械加工をする目的として鋼材を購入する場合、その多くは焼鈍が行われ納入されますので、納入記号は”A”(annesling)としています。このようにミルシートに納入記号が記載されていますが、その記号には以下のような意味があります。
参考に載せておきます。
R (as rolled):圧延のまま
A (annealing):焼なまし
N (noralize):焼ならし
Q (quench an temper):焼入れ焼戻し
NT (noralized and temper):焼ならし焼戻し
S (solution treatment):固溶化熱処理
SR (stress reliving):応力除去焼なまし
SA (spheroidizing annealing):球状化焼なまし
5.まとめ
・「溶解」→「精錬」→「鋳造」の工程を経て、棒、板、管などの鉄鋼材料の素材ができ、鉄鋼の成分はこの工程で決まる。
・鉄鋼の記号は[S(steel)]から始まり、形状、用途の記号、最後に強さ、炭素量を示している。
・ミルシートとは鋼材メーカーの検査証明書である。
・ミルシートに記載されている「納入状態」とはどのような熱処理状態で納入されるかを表している。
以上です。
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