私は理系大学の機械工学科の出身ですが、4年間学校には行っていましたが、機械工学のことをほとんどわかっていませんでした。それなのに機械部品メーカーに就職したので、とても困りました。まず始めに苦しめられたのは金属加工です。金属加工と言ってもいろいろな範囲を指しており、ドリルとかでぐりぐり穴開けるんだな~程度しか知りませんでした。そんな当時のわたしレベルの人間でもわかるように、まずは金属って何?から解説します。
1.金属とは?
金属にはいろいろな種類が存在します。鉄、アルミ、ステンレス、金、銀、銅…など 聞いたことがある種類の金属から、マニアックな種類の金属まであります。すべて金属ですが、皆さんがよく目にする工業製品に使用される一番メジャーな金属は炭素鋼になります。この炭素鋼の主成分のほとんどは鉄なので、一般的には鉄と呼ばれていますが、正式には炭素鋼です。
この炭素鋼とは主成分の鉄に数%の「炭素」が含まれていて、この炭素量によって金属の強度が変わります。しかし実際には炭素(C)だけではなくケイ素(Si) マンガン(Mn) リン(P) 硫黄(S)などの成分量によって強度、特性が変わりますが、話が難しくわたしもよく知らないので炭素だけの話にします。
炭素鋼にはSS400 S45C などの材料の種類を表した材料記号というものがあります。この材料記号にはそれぞれ以下のような意味がありますが、特に覚えなくてもぜんぜんOK!、こんな意味があるんだな程度で十分です。
例:
SS400
S →Steel:鉄
S →Stuctural:構造用
400 →引張強さ 400MPa
S45C
S →Steel:鉄
45 →炭素量 0.45%
C →Carbon:炭素
2.鉄は温度によって硬さが変化する。
「金属は熱処理をすると組織変態により硬さが変わる。」ってことを聞いたことはあるとは思いますが意味不明ですよね。「熱処理」という言葉だけは聞いたことがあるとは思いますが、よくわからないですよね。
身近なもので例えると、水は温度が下ると固くなり、常温では柔らかくなり、高温では水蒸気になります。でもその現象はその温度の時の状態なので、水蒸気を冷やすと水になって、さらに冷やすと氷になる。氷を解かすと水になり、さらに加熱すると水蒸気に戻ります。
つまり、水というモノはその時の温度によって硬さが変化しますが、金属はそうでもないのです。
金属の熱処理の違うところは、ある高温温度(700℃)に達した後に常温に下がるまでのスピードによっては硬さが変わってきます。わたしはひと昔前まで、熱処理は温度が高いほど硬くなるイメージをしていましたが、実際は温度が下がる(冷却速度)事によって硬さが変わります。さらにはこのスピードの違いに加えて、炭素(Carbon)の含有量の違いにより硬さが大きく変わります。
硬い ← 金属の硬さ → 柔らかい
早い ← 冷却速度 → 遅い
多い ← 炭素 → 少ない
3.金属加工方法の決め方
ここまでの説明でわかったように金属は熱処理の違い(冷却スピードの違い)によって硬さが変わります。金属加工をする上で硬さを知ることはかなり重要で、凍った肉を丁寧に研いだ包丁で切るようなもので、切れないし、あっという間に包丁がボロボロになります。
肉は凍っているので見た目で硬さがわかりますが、金属は冷却速度の違いで硬さが変わるため、常温でも見た目でその硬さはまったくわかりません。そのため、いくつもの金属加工の種類から、どのような加工方法を選択するかは、まずは硬さを知る事が第一優先なんですね。それから必要な精度、生産性を考慮して加工方法を決めるのです。
4.常温の鉄って全部硬いよ。
「鉄」って、だいたい硬いじゃん。
高温でなければドロドロにはならないのでは?
高温だからターミネータは溶けたんじゃないの?
その理解で良いのですが、ここで言う硬いとは常温時の硬さのことになります。鉄の硬さはえんぴつの2Bとか1Hみたいに、数値で表していて、鉄の硬さを表すものとしてよく使用されるのがHRC(ロックウェル)という表記方法で20~70くらいの値で数値が大きくなるほど硬くなります。
でもどこからが硬くて、どこからが柔らかいのってわからないですよね。硬さのだいたいの目安は以下の通りで、硬さによって加工する方法がかわるんです。
HRC20~30 :曲げる、押す、潰す、などで形を変えたり、ペラペラできる。
HRC30~40 :ドリルなどの工具で穴開けたり、削ったりすることができる。
HRC40~50 :特殊処理されたドリルや工具でないと加工ができない。
HRC50~ :砥石(包丁を研ぐアレ)など鉄よりも硬い工具でしか加工ができない。
5.まとめ
・工業製品のほとんどは炭素鋼(鉄)である。
・鉄は含まれる炭素量によって、硬さが変わる。
・鉄は熱処理方法(冷却スピード)によって、硬さは変わる。
・鉄の硬さはHRCという数値で表すことができる。
・鉄は硬さによって、加工できる方法が決まってくる。
わたしは大学で[熱処理工学]という授業があったことは記憶していましたが、何を教えてもらったのかは全く覚えていない。当時も何かがわかったって感じもなく、単位が取れるところだけを暗記していただけで、なんでこんなことを覚える必要があるの?って感じでした。でも機械を作るためには金属加工が必要で、加工をするためには熱処理を知る必要があるというのを卒業して何年も経ってからわかるとは、、、、ちなみにわたしはすべての教科、全部意味がわからなすぎて、大学卒業と同時に教科書を全部ブックオフへ持っていきました。
以上です。
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