品質管理010 ~スキルマップ(力量管理)~

品質管理
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昔、「メジャーリーグ」という映画がありました。インディアンスという34年も優勝から遠ざかっている弱小チームがリーグ優勝するという話です。チームにはコントロールの悪いピッチャー、足だけがやたら速い打てない打者、変化球が打てないホームランバッター…など、個性が強いキャラクターが登場します。長所と短所が入り混じるこれらキャラクターをチーム監督がうまく利用するのですが、まず始めに始めたのが選手との面談でした。
選手たちとコミュニケーションをとる事で信頼関係を築くとかはありますが、実務的にはメンバーの情報が分らないとチーム作りができないからです。ピッチャーがいないチームは野球ができません。一方、投げるのが得意な選手ばかりでも点が取れないので勝てません。つまり、チームを運営するにはそのチームの現時点でのいまいる選手のスキルを明らかにして、近い将来のスキル育成計画を立てることが最善なのです。

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仕事はチームでするものって、良く言いますね。チームのスキルを見える化し、計画することを力量管理と言い、仕事の品質を管理する上では避けては通れないものです。

1.要求事項

皆さんお馴染みのiso9000の要求事項の中に「7.2 力量」というものがあります。すべてisoに従う必要はないのですが、一般的な考え方としてはisoの要求事項に従っておけば、大外れはしないのでこれを参考にすると、、

a).必要な力量を明確にする事
b).教育、訓練又は経験により、力量を備えている事
c).必要な力量を身につける為の処置をとり、その有効性を確認する
d).力量の証拠として文書化する

上記がiso要求事項の抜粋ですが、これらa~dを満たしていれば力量管理はできていると判断して問題ありません。

2.スキルを挙げる

まず始めにやらなければならないのは要求事項aになります。これはそもそもその仕事に必要な力量ってなんですか?ってことです。
野球を例に挙げると、試合をするためには9名必要なので構成メンバーは9名が必要。次に試合に勝つことを目的とするとピッチャー、キャッチャーが各1名、打者が7名必要になるため、それぞれのポジションに必要な「投げる」「捕る」「打つ」のスキルが必要であることがわかりますね。
これが「必要な力量を明確にする」ことになり、必要なスキルはそのチームのミッション(試合に勝つ)に合わせて考える必要があります。もし目的が(試合をする)のであれば、スキルは「投げる」「捕る」だけでも十分ですからね。
私が過去にいろいろなチーム(野球ではないですよ)の力量管理表(スキルマップ)を見た中での悪い例として、そのチームに今あるスキルだけを列挙しただけで、チームのミッション達成に向けたスキルが充分でなく、必要なスキルが含まれていないことがありました。例えると「ストレート」「カーブ」「フォーク」といったように投げることだけに特化したスキルだけを挙げても、チームのミッションである勝つことを達成することはできませんね。
一見、スキルを細かく分類しスキル管理ができているように見えても、よくよく考えるとただの「スキルコレクタになっていた」なんてことはなかなか自覚できないのですが、ありがちなんです。

3.教育、訓練をする

次にチームメンバーはそのスキル(力量)を備えていなければなりません。スキルを備えさせるには教育をしたり、訓練を繰り返し行う必要がありますが、最も重要なことは各スキルの範囲を明確にすることです。例えば「投げる」スキルを教育する場合、基本のキャッチボールからピッチング、遠投、変化球までさまざまです。これをすべてまとめて「投げる」スキルとしてしまうと習得までに途方もない時間がかかります。そのため「投げる」スキルを分割します。例えば「投球基礎」「ピッチング」「守備投球」などといったように目的に応じて、スキルを分割していきます。
そして分割されたスキルがどのような行為までが適用される範囲かを明確にする必要があります。そのためには教育、訓練マニュアルなどを作成し、ある範囲(ページ)までがこのスキルに該当するというように決め、教育、訓練をします。また経験者の場合、そのマニュアルの範囲内を理解しているか?していないか?を確認する事で教育訓練が必要か?不必要か?の判断もできます。

4.スキルの有効性の確認

スキルを決め、スキルを備えさせたら、後はスキルの有効性の確認です。有効性の確認とはスキルがあると判断される者(例で言うところの選手)もしくはされた者が、そのスキルを本当に有しているかを確認することを指しています。つまり、マニュアルで決められた範囲のスキルを本当に理解しているのか?できるのか?を確認した上で「スキルが有る」と認定しなければなりません。
この確認作業で最も簡単なのは、理解度テストを行うことです。テストと言っても、テキスト形式にこだわる必要もなく、面談方式の質疑応答で判断しても構いません。しかし、注意しなければならないのはスキル認定者は認定すべきスキル範囲を知り、確認すべき項目を予め決めてなくてはなりません。ありがちなのはやはりスキル認定者の主観や思い込みが生じることでスキルとは関係のない人間性や他のスキルレベル、経験値に惑わされてスキル認定をしてしまうことです。

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経験年数が浅い新人とベテランで同じスキル認定をする場合には評価内容を変えてはいけないのよ。

5.スキルマップの作成

ここまで来たら、認定したスキルを記録に残しましょう。このスキルを記録したものを「スキルマップ」や「力量管理表」などと言われるものです。どのようなものでもよいですが、マトリックス図法で見やすいものが理想的です。また各認定スキルの[初心者]→[ベテラン]などと段階的にスキルレベルを表したい場合は〇→●といったようにするとわかりやすい表になります。さらにこの記録は貼り出して、常にメンバーの目に触れるところにおくことも必要です。
これまでの説明で作成されたスキルマップは現時点でのメンバーのスキルを表したものです。しかし、チームリーダはこれをあるべき姿にしなければなりません。このあるべき姿というのが「勝ちやすい」チーム作りです。例えば、今のチームは点は取れるが失点も多く、守備力が足りないと感じている。にもかかわらず「守備投球」スキルを保有している者は2名だけあったため、5名までに増やしたいという希望がある場合、スキル増加を計画しなければなりません。強化したいスキルが1種類であれば覚えていられるのですが、新人が加入したり、別のスキルも増やしたい場合、それらの計画を覚えるのは困難です。そのためスキルマップの中にこのスキル強化計画を追加すれば、現時点でのスキル確認とスキル強化計画を同時に把握することができます。つまり、スキルの現在と未来を表したものがスキルマップのあるべき姿なのです。

6.まとめ

~スキルマップを作成するための手順~
・ そのチームに与えられたミッションを達成するために必要なスキルを挙げる。
・ 備えさせるスキルの範囲をマニュアルなどで明確して、教育、訓練を行う。
・ 主観や思い込みでスキル評価をせず、マニュアルに沿った内容でスキルの有効性を確認する。
・ スキルマップに記録をする。
・ スキルマップには現時点のスキルと今後強化するスキルの双方が表現されていることが望ましい。

以上です。

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